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用語解説
フロンティア事変、その顛末
迫り来る月の落下に対するために、
秘匿された聖遺物の力を以ってして抗う――
少なくともF.I.S.の掲げた理想は崇高であり、疑うことなく「善」であったが、
稚拙にして空回るばかりの展開を経て、もたらした混沌は「悪」そのものであった。
現実の中に英雄は折り合うものではなく、排他されるのが常であるのだが、
ウェル博士のように他者を顧みない意志だけがすべてを超克し、爪痕を残せるという、
皮肉にして残酷な結末を見せつけながら、フロンティアは浮上する。
迷い、躓きながらも、
ウェル博士同様に理想を貫徹させるべく奔走したナスターシャ教授の機転によって、
マリアの歌を介して世界中より高められたフォニックゲインにより、
月の遺跡を再起動させ、一部不全となっていた機能を回復。
設定されていた公転軌道へとアジャストされることで落下の阻止には成功する。
装者たちの活躍によって、
フロンティアから伸びる端末となったネフィリムは撃破される。
だが、ウェル博士の最後のコマンドによって、
フロンティアの船体すべてのエネルギーを暴食したネフィリムの心臓は、ネフィリム・ノヴァへと再生。
臨界に達すると一兆度のエネルギーを解放する、文字通りの爆弾となって地球を脅かす。
攻撃を仕掛けても、
そのエネルギーを吸収し、臨界到達を早めてしまうことに躊躇する装者たち。
クリスは手にしたソロモンの杖をエクスドライブの出力にて機能拡張し、
バビロニアの宝物庫にネフィリム・ノヴァを格納することで、地球壊滅の危機を回避しようと試みる。
戦いの舞台は、
高々度から、バビロニアの宝物庫内部、そして、地上の海岸へ。
英雄になることを望んで引き起こしたウェル博士の災厄に立ち向う最後の希望は、
英雄でない少女、小日向未来がソロモンの杖に込めた願いである。
バビロニアの宝物庫のゲートは閉じられ、
位相の異なる空間の向こうにすべての災厄を封印するのであった。
F.I.S.の構成員のうち、宇宙にて行方不明となったナスターシャ教授を除く、
ウェル博士、マリア、調、切歌は、逮捕・拘束され、ここに一応の事態収束となった。
F.I.S.の活動の殆どであり、逮捕された日本国内での裁判が予定されていたが、
国家でなく、全世界を相手にした前代未聞のテロ行為に対し、米国政府が国際法廷での審議を要求。
これには世界正義を標榜する米国政府の裁判介入を実現させ、
フロンティア事変の裏側にある諸々の「不都合な真実」を闇に葬る思惑があった。
口封じのため、
ウェル博士やマリアのみならず、未成年である調や切歌にも死刑適用を進める米国政府。
だが、先んじて仕掛けた外務省事務次官・斯波田賢仁の働きによって、
月落下の情報隠蔽や、F.I.S.の組織経緯などが激しく糾弾されることとなる米国政府は、
国際世論の鋭い矛先をかわすため「そんな事実などない」と終始主張することになった。
誰の目にもブラックに限りなく近いグレーであったが、米国政府は頑なに情報開示と捜査介入を拒否。
日本政府もそれ以上の追求をしなかったことから、
米国政府に情報隠蔽の事実はなく、また、F.I.S.などという組織も存在しないという結論に至る。
あまりにも理不尽で、しこりの残る結末ではあるが、
その結果、存在しない組織F.I.S.がテロ行為など起こせるはずもないというパラドックスに陥り、
まわりまわってウェル博士やマリア、調、切歌の罪状は消滅。死刑適用が回避されることになった。
現在、逮捕者全員は国連指導の特別保護観察下におかれている。
あえてグレーを含ませることで米国政府の思惑を封殺したやり方に対し、
当の斯波田事務次官は
「トワリよりもニハチの方が喉ごしがいいってもんだ」とコメントを残している。