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用語解説

現実に抗う理想

米国政府に叛旗を翻し、その制御下より離れたF.I.S.は、
米国と協力関係にある各国政府をも敵にまわし、
「フロンティア計画」を遂行すべく、独自活動を開始する。

まず手始めにQUEENS of MUSICの会場を占拠してみせるのだが、
その目的は、フィーネがネフシュタンの鎧を起動させた先例にならい、
アーティストとオーディエンスの共鳴が生み出す爆発的なフォニックゲインの高まりにて、
基底状態にあるネフィリムを再起動させることであった。

だが、心より通じ合った天羽 奏と風鳴 翼のツヴァイウィングでなく、
挑み戦う気概でぶつかり合ったマリアと翼の歌声では、
あの時の奇跡を再現することができなかった。

そこでF.I.S.は、プランBへと切り替える。
絶大なるリスクを伴うが、日本政府保有の装者たちをこの場に呼び込み、
彼女たちが放ち、相乗的に高め合うフォニックゲインの獲得を目論むのであった。

合わせて、後に自分たちの主張する「極大災厄」の真実性を高めるため、
国家が隠蔽する事実――
日本政府が保有するシンフォギア装者が、風鳴翼であることを暴き立てようと試みる。

結果、ネフィリムの起動には成功したものの、装者の正体暴露には失敗。

当初の筋書きにないマリアの人質解放や、
壇上を支配するマリアの指示にない行動を勝手にノイズに命じるウェルなど、
ほころびを生じさせる不協和音は、この段階から見て取れるのであった。

QUEENS of MUSICの会場で語られるはずであったF.I.S.の目的は、
極大災厄――遠くない未来に月が落下する事実の公表と、
その事実を知る米国政府が弱者を切り捨てた、
一部特権階級の救済を優先させていることを弾劾し、
可能な限り人命を救済すべく、新たな策を提示することであった。

そのために用いられるのが、いまだ謎に包まれたフロンティアであり、
フロンティアを起動させるのに不可欠なのが、
自律稼働するエネルギー増殖炉とも呼ばれる完全聖遺物ネフィリムの覚醒心臓である。

フィーネの遺した智慧と技術を受け継ぐF.I.S.の聖遺物研究者として
フロンティア計画を進めるナスターシャであったが、
理想家の見る夢は、人の思惑と不測の事態に翻弄され続け、
その遂行は遅々として捗らず、また思うように果たされない。

ついに計画の行き詰まりを痛感したナスターシャは、
F.I.S.単独の作戦行動を諦め、
米国政府と技術供与を始めとする協調路線にシフトすることで、
より現実的な路線で、月の落下に対抗しようと試みる。

だが、米国の対応は、
F.I.S.の異端技術を手に入れつつも、その存在を抹消することにあった。

フロンティア計画による人類の救済――
ナスターシャの夢見た理想は横たわる現実に屈し、ここに潰えてしまう。
だが、どんな現実の只中にあってもひとり、夢見た理想に没頭し、邁進する者がいる。

死病を患うナスターシャが、
せめて計画が完了するまで命を存えるべく、
そして、世界を相手に立ち回る戦力であるシンフォギア装者の管理のため、
計画に加えた生化学者のウェル博士である。

理想(ユメ)を諦めない――ウェル博士のひたむきな行動は、
突きつけられる現実に躓きつつも、決して歩みを止めはしない。

すべてが停滞し、混迷する状況だからこそ、
揺るぎないウェル博士の理想「英雄」は、ついに現実をも超克しはじめる。