#08
思い描いた都合のいい未来図が翳るからこそ、逸脱した思惑が光り輝く。
だが、ナスターシャは、そんなウェルの英雄願望の暴走を抑圧するために、
あえてフロンティアの封印解除に失敗してみせ、科学者が懐いた夢の限りを知らしめる。
それでも、己が人の頂に立つ幻想に昂ぶりを抑えられないウェルは、
ついに瓦解しかけた組織を自分の手で牽引すべきと思い振り切るのであった。
これ以上、フィーネを演じる必要はないと告げられたマリアと、
自分がフィーネの魂に塗り潰されるのではないかと、ひとり恐怖する切歌。
そして、ガングニールの侵食に蝕まれ、ヒトの在り方を喪失しつつある響。
迫る月の落下に打つ手無しの世界状況と同じく、少女たちの胸の内も混迷を極める。
壁が高く強固であるならば、砕いて越えることもできるだろう。
だが、立ちはだかるのは「現実」という、歌を力に戦う者にとって最悪のバケモノである。
ただもがくばかりの状況を打破すべく、ついにマリアはその手を血に染めるのであった。