#06
飢餓衝動のまま暴れるネフィリムは、ついに最高の餌食を咥え込む。
その身と同じく、生きた聖遺物の甘き味わいに共食いの巨人は、
胸を昂ぶらせ早鐘のように心臓を打ち鳴らすのであった。
狂気が正気を駆逐する瞬間に頂と達するウェル博士。
――だが、突如として巻き起こる破壊の黒い暴風は、博士の思惑を吹き払い、
そして、さらなる脅威を呼び込むのであった。
月明かりの下にて何が起き、これから何が起ころうとしているのか。
混濁する意識の中、響はいつかに過ぎた光景を思い返す。
自分の一生懸命が誰かを傷つけてきたという事実。
ウェル博士が命の救済を宣言するのなら、この拳が握り締めた正義とはいったい?
それでも誰かに踏みにじられた少女は、誰かのために固めた拳を躊躇なく突き出す。
考えているのではない。ただそうあれと胸に感じているのであった。